のたうちまわり

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便意に抗え「ブレイキング・ゴッド」

ブッチッパ!

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ブレイキング・ゴッド(原題「the mule」。意味は頑固者、とか)は2014年公開のオーストラリア映画。クライムサスペンスであり、ブラックコメディでもあり、ソリッド・シチュエーション・スリラーにもなり得る。

 実話を元にした、ヘロインの運び屋をすることになった男の物語。
 主人公のレイはいい年こいて両親とベッタリで、何となくボーッとしてる冴えない男。ある日悪友からタイ~オーストラリア間の密輸の仕事を持ちかけられた。手法は「ヘロインを詰めたコンドームを飲み込み、体内に隠して検問を通過する」というもの。その量実に1キロ! 捨て身の作成は成功したかと思われたが、レイはヘマして結局拘束されて、彼は警察に勾留されることに。
 密輸をしていることは明らかなものの、法律上の問題もあり証拠なくして逮捕はできない。勾留期限は七日、トイレに行った時点で罪が確定してしまうレイと警察、苛烈な我慢比べが始まる──


 最近見た映画の中で最も気に入ったのがコレです。
内容は非常にシンプル、「警察の監視下の元ひたすらウンコを我慢する」それだけ。
それなのに、間延びすることない冷や汗もののサスペンスに仕上がってるのが流石です。
 脚本は「SAW」で有名なリー・ワネル
堪えきれぬ脱糞衝動に決死の表情で歯を食いしばりつつ耐える主人公の姿はまさにジグソウに殺人ゲームを仕掛けられた被害者のよう。

 ちなみに邦題に深い意味はないかと。ゴッドをブレイクするような背徳的な映画であることには違いはないんだけど。だいたい想像通り、麻薬つながりで「ブレイキング・バッド」の便乗邦題だと思う……。
ブレイキングバッドも必見の名作ドラマ。見とけよ見とけよ~

 
 排便を耐えることの苦しさが役者名演で苛烈なほど伝わってくるこの映画。五日を超えてくると身体がパンパンに膨らんできて、しまいには出血寸前に……ヒエ~ッ
 勾留している警官たちもかなり悪どいやつらで、無理矢理食べ物を食わせたり腹を殴ったり……いかなる手段を用いてでも脱糞させねばならない、といわんばかりに徹底的にレイを苛め抜きます。当然シャワーも着替えも付きっきりで監視。死ぬ思いで七日耐えたかと思えば、裁判所に期間の延長が認証されてしまう。
 カラダより先にアタマがおかしくなりそう。それでも耐えるレイ君のメンタルの強さに脱帽。


 で、本作最大にして最低の名シーンが物語が終盤に差し掛かり始めのあたりにあります。
 夜中、いい加減肛門のキャパシティを超えてしまったレイはついに漏らしてしまう。
 ここで映される排泄物が余りにもリアルで辟易としてしまうこと確実。
その汚物にまみれた袋、それを今すぐどうにかしなければ……彼はそれを掴み、口を大きく開け──

 スプラッターとはまた違ったベクトルの傷ましさが……ある意味究極のグロシーンが。なんでr-15判定すら受けてないんですかねコレ。

 「ウンコを我慢し続ける」という題材だけに、というか文字によって起こすと完全にギャグだけど、決して恵まれていない家族の為に泣く泣く犯罪に手を染めた主人公の悲哀、悪友との強い友情を感じさせる描写といったヒューマンドラマもしっかり書かれているし、極悪警官のトムや若干人権屋気質なものの敏腕の女弁護士など脇役もなかなか魅力的で、「出落ち」感は全くないです。冴えなかった主人公もラストでは閃きと勇気を持って勝負に出ることになり、その結末は今までの淀んだ空気を吹き飛ばすように、快便のごとくフレッシュだ。
 
 普段知ることのないオーストラリアの文化や風俗といったことも割と描かれているのも興味深いです。主人公が所属しているのがオーストラリアンフットボールという楕円形のスタジアムでプレイするスポーツのチームだったり、国ぐるみでボートレースに熱狂していたり。

 でもなんといってもやっぱり上品な要素が1個も無いってのが素晴らしい。イロモノ好きは必見、そうでなくても密室サスペンス系のファンなら案外楽しめると思います。
 勿論、何かを飲み食いしながらとか、家族や彼女と一緒に見るなんて愚行はしてはいけない。


 視聴中、トイレに行きたくなっても席を立たずにいるとさらにレイに感情移入できるかも?